徳島県 飯泉知事インタビュー

徳島県 飯泉知事にお話を伺いしました。

澁谷:徳島県の共通コンセプト「vs東京」について、お聞かせ下さい。

飯泉知事「vs東京」には、東京にいる人たちに「あなたの故郷はどこですか?」、「今の生活に満足していますか?」というメッセージを伝え、気付きを与えたいという想いが込められています。東京一極集中と言われますが、東京にいる人の多くは地方出身者です。「vs東京」は、そのような人たちに地方に戻ってきたらどうかというメッセージを含んでいます。また、東京に喧嘩を売るのではなく、地方が東京と「一対」となって、様々な課題やテーマを解決していこうという意図も込められています。平成26年12月には「対」の字を色紙にしたためて、当時の東京都知事である舛添知事を訪問し、徳島県は東京と「一対」となって課題解決に取り組んでいくことをお伝えしました。舛添知事からは2020年の東京オリンピック、パラリンピックの開幕式に、阿波踊りを取り入れたいというお話をいただきました。開幕式で徳島県の有名連1,000名に阿波踊りを踊ってほしいという相談でしたが、私からは有名連だけではなく、東京各地にある連の方にも200名ほど参加してもらい、一緒にやりましょうというお話をしました。また、当時はエンブレムも決定していませんでしたが、イメージカラーは藍色が良いというお話から、閣僚、知事等の来賓者には、徳島県の藍染を使った着物を着て登場してもらいたいというお話もありました。そして、この「vs東京」「徳島vs東京」と言っていない点がポイントなのです。地方が東京には勝てないという負け犬根性をもってはならないという意識と、地方と東京が互いに切磋琢磨し、課題解決に取り組んでいきましょうという意味が込められていますので、他県にも是非「vs東京」を使ってほしいと思っています。徳島県が「vs東京」を打ち出した翌年、東京は「&TOKYO」と返してきました。徳島県の発信に対し、東京も一緒になって取り組みましょうと打ち返してきたのです。また、「vs東京」の次には、徳島の持つ強みや価値を発信するための「10の『徳島宣言』」を発表しました。東京で暮らす多くの方々に対して、本当に東京でなければならないのかという疑問を投げかけ、地方の方が充実した生活ができるというメッセージを発信し、地方創生や地方への回帰を促しています。

澁谷:確かに東京都が抱える課題は、たくさんありますよね。それを「あなたの故郷はどこですか?」というメッセージとともに、地方と東京が一対となって課題解決に取り組んでいきましょうという「vs東京」は非常に面白いコンセプトですね。

澁谷:徳島県が誇る自慢の食材の魅力やブランド戦略について、お聞かせ下さい。

飯泉知事:四国三郎の異名を持つ吉野川、県内で完結する那賀川の二大河川が、徳島県の肥沃な大地を作ってきました。また、徳島県は3つの海を持つと言われており、鳴門の渦潮で有名な瀬戸内海、はもで有名な紀伊水道、かつおやまぐろが獲れる太平洋の3つの豊かな海に囲まれています。各々の海で獲れる魚種が異なる等、徳島県は農林水産品に非常に恵まれています。徳島県の四大ブランドとして、「なると金時」、「鳴門わかめ」、「すだち」、「阿波尾鶏」があげられますが、その他にも多くの魅力的な食材があります。その一つがはもでしょう。はもの漁獲金額は、徳島県が日本一です。今やはもを食べないと終わらないという祭りが、全国には3つあります。京都祇園祭(7月)、大阪天神祭(7月下旬)、徳島阿波踊り(8月)が、日本三大鱧祭りと言われています。元々は西日本での消費が多く、東日本ではあまり食べられない魚でしたが、この日本三大鱧祭りを東京で売り込んだところ、東京でも食べられるようになりました。

澁谷:今では、東京でも普通にはもを食べるようになっていますよね。その他には、どのような魅力的な食材があるのでしょうか。

飯泉知事:野菜では、「春にんじん」が有名です。徳島県のにんじんが全国で一番収穫時期が早く、3~4月の時期に、東京のデパートで売られるにんじんのほとんどが徳島県産です。徳島県のにんじんは、皮が薄いのが特徴です。にんじんを水洗いした後、皮を向かずにジューサーにかけると、それだけで非常に甘味のあるジュースができます。他には、徳島三大香酸柑橘といわれる「すだち」、「ゆず」、「ゆこう」があります。ゆずといえば、高知県馬路村をイメージされますが、元々のルーツは徳島県木頭村です。木頭村から馬路村に伝わり、馬路村がゆずの町になったのです。ゆずは海外にも積極的に売り出しており、ヨーロッパの二大食の見本市であるフランスのシアル・パリ展とドイツのアヌーガ国際食品展示会に出展しています。フランスでのヒットを皮切りに、今では年間1.8トンものゆずをヨーロッパに輸出しています。今年の2月のバレンタインでは、フランスのパティシエが、徳島県のゆずを使って様々なチョコレートを作り、東京のデパートで販売しました。他にも、「美~なす」という新種のなす(白なす)や、ブロッコリー、しいたけ等、それぞれ特徴をもった食材を生産できるのが徳島県の特色です。

澁谷:地方銀行フードセレクション2016にも、徳島県から「柚りっ子」さんが出ていましたね。

澁谷:徳島県のブランド農産品の海外輸出戦略について、お聞かせ下さい。

飯泉知事:徳島県は、日本で最初にハラール認証に取り組んだ県です。イスラム圏は、今や市場規模16億人と言われています。しかし、イスラム教の戒律が非常に厳しく、イスラム圏から日本に来た人たちは、食べ物に困り、10キロ以上痩せたという話を聞きました。徳島県は、食べられるものがなくて困っているイスラム教徒の人たちのなんとかしてほしいという要望に応えました。その中でも、徳島県が今、特に力を入れている食材が鹿肉です。日本ではあまり馴染みのない鹿肉ですが、海外ではごく普通に食べられています。昨年11月に幕張で開催された「JAPAN HALAL EXPO 2015」に鹿肉を出展した際には、非常に大きなインパクトを与えました。来年は、ドバイで開催される見本市「ガルフード2017」に徳島生まれのハラール商品を出展し、ハラール市場の本丸である中東で初めてのPR・商談を行うなど、今後も積極的にハラール市場に進出していくつもりです。

澁谷:確かにフランスやアメリカのレストランでは、メニューの中に鹿肉を使った料理が普通にありますよね。イスラム教徒も鹿肉を食べるというのは、勉強になりました。

澁谷:6次産業化の推進についてお聞かせ下さい。

飯泉知事:農林水産省から、6次産業化の市場規模を10倍にするという方針が出されましたが、6次産業化に対して学問的に取り組む県はありませんでした。また、徳島県は農業大県でありながら、中四国9県の中で唯一県内の大学に農学部がありませんでした。それに対して、工学部は中四国9県の中で、徳島大学が最大の規模を誇ります。そこで、徳島大学工学部の生物工学科に、農学分野への切り口を見つけ、今年4月、徳島大学に、実に30年ぶりの新学部で、全国初となる生物資源産業学部が創設されました。教壇には、徳島県農林水産部の職員が立つ等、大学へ人的支援を行っています。さらに、学生の減少に伴い統廃合が進む中、商業高校と工業高校、農業高校と商業高校、また農業高校と工業高校を一緒にすることで、6次産業化を担う人材を高校から育成し、大学進学へ繋げる新しいキャリアパスを設けることができました。

澁谷:職業高校を統合し、さらに生物資源産業学部を通してキャリアパスが描けるのは面白いアイデアですね。

飯泉知事:大学卒業後の就職状況は、危機的な状況にあります。普通科の高校を出て、明確な目的を持たずに大学進学した学生は、企業の求めるスキルを兼ね備えておらず、就職できない状態になっています。就職してからスキルを身につけるのでは遅いのです。スキルを身につけたいと思う学生が、専門学校に行くのであれば、高校でスキルや感性を身につけ、それらを大学で更に磨いていくことで、企業の求める6次産業の人材育成ができるキャリアパスを作ろうと考えました。

澁谷:若い学生に求められるのは、スキルと感性ということですか。

飯泉知事:感性を学ぶのは、若いうちにしかできません。若ければ若いほど良いのです。身につけた感性に磨きをかけることは、後になってからでもできます。徳島県は、大学教育のあり方を、6次産業化を契機に変えていく必要があると思っています。第4次産業革命が起これば、今ある職業のほとんどはなくなるでしょう。そうなった時に残るのは、感性です。スキルと感性を高校でしっかりと身につけ、大学で磨いていくことをしなければ、日本人は世界で活躍できないと思います。

澁谷:確かに経営学やマーティングはいつでも学ぶことができますが、感性は若い時にしか学べないですよね。

澁谷:最後に、徳島県独自の生産者支援の取り組みについてお聞かせ下さい。

飯泉知事:徳島県の場合、中山間地域の小規模経営者が、県内の生産者の約4割を占めます。国家的には、日本企業の海外進出という「攻め」の戦略を後押ししていますが、徳島県としては4割の小規模経営者の「守り」に関して、しっかりと取り組んでいく必要があると考えています。今年度から農林水産業未来創造基金を5億円で創設しました。応募者にはコンペで競ってもらい、良いアイデアに基金から支援をします。「知恵は地方にあり」、「農林水産業の知恵は生産現場にあり」だと考えていますので、若い人には是非頑張ってもらいたいです。また、基金だけではなく、日本国内でのブランド化、「vs東京」としての東京での旗上げが必要です。新しいブランドとしては「阿波ふうど」を掲げています。「阿波ふうど」のロゴは、横から見るとローマ字で「AWA」、縦から見ると漢字で「幸」と読めるようになっています。「阿波ふうど」のもとに徳島県のブランドを一堂に集め、食を通じて多くの人に幸せをもたらそうというコンセプトがあります。そして、東京での拠点づくりとして、徳島県はローソンと提携し、ローソンの空きスペースで、徳島県の産品を販売しています。そこで互いに相乗効果が発生しますが、おにぎりの具に阿波尾鶏を使用する等のコラボも行っています。更には、全く違うイメージのアンテナショップをつくろうということで、奥渋谷に「とくしまブランドギャラリー」のオープンを来年度に予定しています。他の都道府県とは異なる場所で、レストラン機能やマルシェ機能、イベント交流施設、宿泊施設を設ける等、今までにはない情報発信拠点を検討しています。また、11tトラックを改造して作った「『新鮮 なっ!とくしま』号」は、天井部分にもPR用のラッピングを行い、東京・大阪・名古屋等、オフィス街の高層ビルで働く人たちからも見えるようにしています。内装にも拘っており、ウィングを開くとオール電化のキッチン設備があり、更にはショーのステージにも使用できます。まさに、移動型ブランドショップです。このように徳島県は、人のやらないことに積極的に取り組んでいます。

澁谷「とくしまブランドギャラリー」「『新鮮 なっ!とくしま』号」も非常に面白いアイデアですね。本日は、様々な面白いお話をしていただき、ありがとうございました。