岡山県 伊原木知事インタビュー

岡山県伊原木知事にお話をお伺いしました。

◆豊かな自然に恵まれた「晴れの国 おかやま」

 澁谷:岡山県の魅力についてお聞かせください。

伊原木知事:岡山県の魅力について、実は一番わかっていないのが、岡山県民だったりします。今まで当たり前だと思っていたことが、県外に出て初めて「自分たちは結構恵まれていたんだなぁ」と気付くわけなんですが、岡山県は気候や水に恵まれ、美味しい食べものがたくさんあります。「カツオのたたき」や「フグ」といった際立ったものはないかもしれませんが、それは裏を返せば、県内の至るところに美味しいものが溢れているということです。それが岡山県の魅力です。

なかでも「桃」や「ぶどう」は、非常に美味しく、「よくここまで手間をかけて作りましたね」と言われるほど、生産者の方が丹精を込めて作っています。白桃は、少しでも力を入れて触ってしまうと、触ったところが茶色になり、贈答品にできなくなってしまいますので、桃農家の方々が、「うちの娘よりも大事に育てています」と話されるぐらいです。県内の生産者の方々にとっては当たり前のことですが、他県の方からすると「ここまでやるなんて」と思われるみたいです。

澁谷:岡山県は、日本一の「晴れの国」とお伺いしました。晴れの日が続けば、他県では渇水が問題になったりします。晴れの日が多くても、岡山県が農産物に恵まれているということは、それだけ水などの資源も豊富ということですよね。

伊原木知事:岡山県は、降水量1mm未満の日が全国で最も多い『晴れの国』ですが、県土を南北に縦断する三大河川(高梁川、旭川、吉井川)のおかげで、水にも恵まれています。県北部には緑豊かな中国山地、県南部には穏やかな海と緑の島々に美しく彩られた瀬戸内海が広がっており、身近な自然と触れ合いながら生活を送ることができる地域です。

澁谷:県庁のすぐ側にも日本三名園のひとつに数えられる岡山後楽園があり、三大河川のひとつの旭川が流れていて、本当に自然に恵まれていると感じます。また、昔の町並みや美術館など、文化的なところもずいぶんありますね。

伊原木知事:県内には城下町など、落ち着きや文化、歴史を感じる場所が多くあり、誇らしく思っています。烏城(うじょう)と呼ばれる岡山城や、白壁の町並みが美しい倉敷美観地区、その他にも蒜山(ひるぜん)高原、美作(みまさか)三湯など、魅力ある観光資源にも恵まれています。

 

◆すべての県民が明るい笑顔で暮らせる県を目指して 『新晴れの国おかやま生き活きプラン』

澁谷:今年策定した「新晴れの国おかやま生き活きプラン」についてお聞かせください。

伊原木知事:どこの県でも県政の羅針盤となる計画が作られていると思います。ただし、このような計画はどうしても網羅的で、すぐに対応を必要とする現状課題への対応型、いわゆるリアクション型になりがちなんです。このプランを策定するにあたって、私が気をつけたことは、もちろんそのような課題にも対応しつつ、少しずつでもお金と人をやりくりし、将来に向けた投資をするということです。

すべての県民が明るい笑顔で暮らせる「生き活き岡山」の実現を目指したこのプランでは、「教育の再生」と「産業の振興」を掲げています。土地の造成から、企業を誘致して生産や納税が始まるまで、或いは小学生が大人になって頑張ってくれるまでというのは、相当な時間がかかるわけです。短期的なことを考えれば、これらに投資することは難しいのですが、このプランには「地域の未来へと視点を上げよう」という私の強い思いを反映しています。


「新」生き活きプランとなっているように、私が知事に就任して以来、前生き活きプランの下で取り組んできた、小学生の学力向上や非行率の半減、企業誘致による約1700億円の投資や2800人を超える雇用創出、刑法犯認知件数の4割減など、様々な分野で加速し始めた岡山県発展に向けた好循環の流れを、さらに大きく確かなものにし、すべての県民が明るい笑顔で暮らす「生き活き岡山」の実現に全力で取り組んでいきたいと思っています。

◆桃の女王『清水白桃』、ゴールデンミルク『ジャージー牛乳』など、自慢の県産品は豊富

澁谷:岡山県自慢の県産品についてお聞かせください。

伊原木知事:岡山と言えば「白桃」です。白桃には、「桃の女王」と呼ばれ、栽培面積が全国1位の『清水白桃』や、県が育成したオリジナル品種の『おかやま夢白桃』などがあります。1玉ずつ丁寧に袋かけをするなど、農家の方が非常に手間をかけて栽培することによって、白に薄い紅色がかかり、上品な甘さと繊維質の少ない、とろけるような食感になっていて、本当に美味しい岡山県ならではの一品です。

そして、「果物の女王」と呼ばれる「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、いわゆるマスカットです。透き通るようなエメラルドグリーンと豊かな香り、気品溢れる食味が特徴で、栽培面積は全国の9割以上を占めます。その他にも、岡山県には大粒、種なし、甘いの三拍子が揃った『ピオーネ』や、『オーロラブラック』『シャインマスカット』『紫苑』など、多彩で個性豊かなぶどうの品種が揃っています。

澁谷:まさに「くだもの王国おかやま」ですね。果物以外には、どのような県産品があるのでしょうか。

伊原木知事:平成28年産米の食味ランキングで、県として初めて最高ランクの特A評価を取得した『きぬむすめ』があります。白くて美しい光沢を放ち、甘味粘りのあるお米で、「本当に美味しいご飯が食べたい」という方には、岡山県産きぬむすめをぜひ一度食べていただきたいと思います。

国内最大級のジャージー酪農地帯で知られる蒜山地域の『ジャージー牛乳』も、自慢の県産品です。今から60年ほど前に、ニュージーランドなどから、蒜山地域にジャージー牛が導入され、現在全国2位の飼養頭数を誇っています。ジャージー牛乳の特徴は、その濃さです。乳脂肪5%前後、無脂固形分が9%以上、高タンパクでミネラルやビタミンも豊富で、美味しくて栄養価も高く、ミルクの脂肪がβカロテンによって黄色っぽくなることから「ゴールデンミルク」とも呼ばれています。

そして、サワラです。サワラは、岡山県民に最も愛されているといっても過言ではない魚で、祭りや祝い事には欠かせません。刺身にしても食べますし、塩焼き、照り焼き、白子の味噌汁など、様々な料理の仕方をします。一般的には、冬に漁獲される『寒ザワラ』が、脂がのって美味しいと言われていますが、岡山県では産卵のために瀬戸内海に入ってくる5月頃が旬とされています。

澁谷:ニラも凄く鮮やかで綺麗な色をしていますね。

伊原木知事:『黄にら』は、レバニラ炒めで使用される青いニラと元々は同じで、岡山県民にとっては当たり前なんですが、他県の方には珍しい食材です。私も大学生の頃に上京して、目の前から黄にらがなくなったときはびっくりしました。黄にらも岡山県が全国生産量の約7割を占める特産品ですが、鮮やかな黄色と、柔らかでシャキッとした食感から、高級食材として取り扱われています。

また、隣にある『千両なす』は、濃い紫色で色つやが良く、皮が薄くて柔らかいのが特徴です。浅漬けにしたときの鮮やかな色合いと、漬け上がりの良さから、京都の老舗漬物店にも愛される一品です。昨年の「おかやまマラソン」では、浅漬けをおもてなし給食として、ランナーの皆さんに提供したところ、非常に好評でした。

最後に、『下津井ダコ』というマダコです。潮の流れが速く、複雑な瀬戸内の下津井沖(倉敷市)で獲れる下津井ダコは、非常に美味しくて全国的にも有名です。大型のタコを大きく広げて寒風にさらして作る「干しダコ」の姿が、下津井地域の風物詩となっており、下津井地区を舞台にしたアニメ映画「ひるね姫~知らないワタシの物語~」でも、干しダコが登場します。

◆町民の知恵によって誕生した伝統的な郷土料理

澁谷:岡山県の伝統的な郷土料理についてお聞かせください。

伊原木知事:岡山県の郷土料理と言えば、『岡山ばらずし』『ままかり寿司』がまず頭に浮かびます。岡山ばらずしは、新鮮な瀬戸内海の幸、彩り豊かな旬の野菜や山の幸などをふんだんに使い、目にも鮮やかに盛り付けられたちらし寿司ですが、これは町民の知恵によって誕生しました。

江戸時代に、備前岡山の藩主池田光政侯が「食膳は一汁一菜とする」という質素倹約の御触れを出しましたが、町民が魚や野菜を目立たないようにたくさんの食材をまぜれば、一汁一菜となると考えたことから、岡山ばらずしが誕生したと言われています。


澁谷:
それは、非常に面白い発想ですね。ママカリとは、どのような意味なのでしょうか。

伊原木知事:ママカリは、あっさりとした旨味が特徴的な岡山県の代表的な魚で、「ママ(御飯)をカリ(借り)に行くほど美味しい」ということから、そう呼ばれるようになったと言われています。ままかり寿司は、その酢漬けをネタにしたにぎり寿司です。

◆昨年度の6次産業化認定者数は、全国2位 (10事業者)

澁谷:6次産業化に対する県の取組みついてお聞かせください。

伊原木知事:岡山県では、儲かる農林水産業の実現と、農山漁村の活性化が期待できる6次産業化を推進するため、事業者の取組段階やニーズに応じた活動支援を行っています。農林水産総合センターなどの県の出先事務所に「相談窓口」を設置し、新規事業者に対しては、専門家を派遣し、個別指導により、商品の企画・開発までを支援しています。

販路開拓支援では、国の認定(六次産業化・地産地消法に基づく総合事業計画の認定)を受けた事業者に対して、首都圏内でアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」を主な会場として商品販売戦略を学ぶ研修や、バイヤーとの商談会、展示会出展による販路開拓支援を行っています。岡山県は、昨年度、国の認定者数が10事業者で、全国2位(中四国1位)の認定数となっており、取組みが着実に進んでいると思っています。

澁谷:全国2位はすごいですね。具体的には、どのような事業者なのでしょうか。

伊原木知事:総社市のレッドライスカンパニー社では、岡山県育成品種の赤米『あかおにもち』を生産していますが、赤米をもっと身近で親しみの持てる商品にするため、甘酒などに加工して販売しています。また、新見市のアーリーモーニング社では、紅茶専用茶葉を使用した自社ブランド『EIJI MIYAMOTO』を立ち上げ、紅茶の開発や、全国への販路拡大に向けて積極的に取り組んでいます。6次産業化は言うほど簡単なことではないと思いますが、事業者にとっては事業拡大につながるので、非常に良いことだと思っています。実際に食べ物を口にする消費者の意見を直接聞くことで、パッケージ一つにしても作り方が変わってきますからね。


澁谷:
知事は天満屋の社長を経験されているので、消費者の目線を非常に大切にされていると感じます。

伊原木知事:天満屋では14年間社長をやっていました。私自身が、見ていて、すごく良い素材や条件が揃っているのに、それを活かしきれておらず、勿体ないと思うことが時々あります。作る人も買う人もハッピーになる可能性は、まだ十分に残っていると考えています。県の支援により、まだまだそれらのギャップを埋める工夫をしていきたいと思います。

◆「連携」がおかやま創生を実現させる、PRの主役は岡山県民

澁谷:地方創生への取組みについてお聞かせください。

伊原木知事:おかやま創生の実現の加速に向け、新おかやま生き活きプランでは、「連携」をキーワードとした「おかやま創生推進連携プロジェクト」を新たに掲げています。そこでは、「人口減少ストップ」と「地域の経済力確保」、「地域の活力創出」、「地域課題解決支援」の各プロジェクトを、政策間連携に限らず、市町村をはじめ、大学や企業、NPOなどの様々な主体と連携して進めていくようにしています。

「人口減少ストッププロジェクト」では、人口減少の主要因である自然減への対策と、県内に人を呼び込み、若い世代の県外への流出を防ぐ社会減への対策の双方にアプローチします。男女の出会いの場を創出することで、若い世代の結婚を促し、移住定住の促進、働き方改革を通じた出産・子育てしやすい環境の整備に取り組みます。「地域課題解決支援プロジェクト」では、廃校の利活用や観光地域づくりといった各市町村の地域課題について、企業や大学などとも連携し、具体的な課題解決策と事業化モデルの開発を支援していきます。

澁谷:県内に人を呼び込むためには県のPRも大切だと思います。岡山県では、知事がお笑い芸人の方とコラボしたり、県民をモデルにしたPRポスターを作ったりと、非常に画期的な取組みをされていますね。

伊原木知事:晴れの国大使になっていただいている「千鳥」さんとの『もんげーボーイズ』をはじめ、だいたい最初に案は見たときは「大丈夫か」と心配になったりしますが、どれもやってみると意外になんとかなっています。

3年前、新橋に鳥取県との共同アンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」を開設するのと同時に、新たなPR戦略として、岡山の方言である「でえれー、ぼっけー、もんげー」の中の「もんげー」をキーワードにしたPR「もんげー岡山」を始めたんですが、私も「もんげーボーイズ」として、千鳥さんと一緒に学生服を着て、県のPRを行いました。

澁谷:知事が学生服を着てPRするのは、非常に面白いアイデアだと思います。

伊原木知事:自分自身は頑張っても、岡山のマイナスイメージを拡散してるんじゃないかと言われかねないと思ったところもあります。『岡山県民ポスター化計画』も同様ですが、まず、みんなで体当たり的に取組むことによって、何か伝わるものがあるのではないかと思っています。岡山県にゆかりのない有名人に「ようこそ岡山へ」とPRをしてもらうよりも、粗削りでも、地元の人たちが自分たちの言葉で「岡山はいいところだから、とりあえず来てみてね」とPRした方が伝わるものがあると思い、取り組んでいます。

澁谷:斬新な非常に面白い取組みだと思います。県民の方に提供している名刺のデザインも素敵ですね。

 

伊原木知事:岡山県民は、控えめな県民性から自己PRが得意ではないという方が多いと思います。私も、県内各地を回り、良いところがいっぱいあると感じましたが、地元の皆さんはお国自慢をしません。何度か訪問しているうちに気づいたんですが、自分から自慢するのは恥ずかしいので、「この地域には、こんなに美味しいものがあるじゃないですか、素晴らしいじゃないですか」と言ってくれるのを待っているんです。それをちゃんと言ってくれる人ばかりがいるわけではないので、それでは非常に勿体ないですよね。「まず、みんなでお国自慢をして、相手のリアクションを見ましょう」と、このようなPRに積極的に取り組んでいます。

澁谷:本日は、貴重なお話をありがとうございました。