広島県 湯﨑知事インタビュー

広島県湯﨑知事にお話をお伺いしました。

◆ 日本の魅力そのものを感じることができる県

澁谷:広島県の魅力についてお聞かせください。

湯﨑知事:広島県は日本の縮図のような県です。都市もあれば、田舎もあり、伝統文化もあります。ありのままの日本というべきでしょうか、日本の魅力をそのまま感じていただける県が広島県だと思います。中国山地や瀬戸内海のある地形から、山の幸、海の幸にも恵まれ、非常に美味しい食材がたくさん集まっています。あらゆるものが多様で、宮島の嚴島神社や原爆ドームなどの世界遺産もあれば、そのほかにもたくさんの観光資産に恵まれています。このようなことから、広島県は日本の縮図のような県だと思います。「日本ってどんなところだろう」と思ったときに広島県に来ていただければ、日本のことがよくわかるはずです。これが、広島県の大きな魅力です。

◆ 現代和牛のルーツは広島にあり

澁谷:広島県自慢の県産品についてお聞かせください。

(瀬戸内 広島レモン/広島県果実農業協同組合連合会)

湯﨑知事:近年、広島県のイメージとして非常に伸びてきているのがレモンです。すでに、広島県のイメージを代表する県産品の一つになってきています。広島県のレモンは、生産量及びシェアで全国1位であり、国産レモンの代表となっていますが、皮を含めて丸々すべてを楽しんでいただけるのが特徴です。レモンというのは、実は皮の部分の香りが一番強いと言われています。「瀬戸内 広島レモン」であれば、皮を削って料理に使用したり、リキュールとして使用する場合にも、安心して味わっていただけます。

この時期(12月上旬)に、ちょうど皮の色が緑色から黄色に変わります。広島県では、夏過ぎから秋の始めまで「グリーンレモン」という名前で出荷していますが、グリーンレモンはフレッシュでさわやかなレモンになっています。そこから季節が進んでいくと、今度は真っ黄色のまろやかなレモンが出来上がります。レモンは本来5月頃に花が咲くため、夏には収穫されない果物とされていますが、広島県では保存が効くように個包装するなどの工夫をして、夏でも出荷できるようにしています。

最近は、広島駅や空港に行っていただくと一目でわかると思いますが、レモンコーナーのスペースが非常に大きくなっていて、もみじ饅頭と同じくらいのスペースを占めるようになっています。その光景を目にすると、すでに広島県を代表する県産品になったと感じます。

(安芸の一粒「厳蠣」/有限会社島田水産)

続いて、牡蠣も広島県を代表する県産品ですが、古くは室町時代から養殖が始められている、非常に伝統のある県産品です。レモン同様、本来夏には出荷されないものですが、今では夏にも出荷できるよう工夫をしています。牡蠣は6~8月に産卵時期を迎え、産卵によって身が痩せてしまいますので、夏には出回らない食材でしたが、今では「かき小町」(広島市)や「ひとつぶくん」(江田島市)など、一年中食べられる牡蠣があります。それらは産卵しない牡蠣であるため、夏でも非常に美味しくいただけます。

また、生食用の牡蠣として、フランス方式で、塩田跡地で作っている「グリーンオイスター」という牡蠣があります。これは、身の一部が緑色になるのですが、フランスでもとても貴重で、高級な牡蠣とされています。

さらに、牡蠣のなかでも「身入り」「鮮度」「こだわり」の優れた牡蠣を厳選して「プレミアムトップかき」としています。本日展示している「厳蠣(げんき)」も、プレミアムトップかきです。厳蠣は宮島の鳥居周辺で採取される、身がたっぷりと入った牡蠣ですが、仕上げ段階でかごに入れて干潟で干出操作を行い鍛えることで、うま味を濃縮させます。牡蠣は元々岩に張り付いて鍛えられ、身がしまる生き物ですので、そのようにかごに入れられて生き延びようとする牡蠣は生命力が強く、非常に美味しくなります。県としては、今まさに色々な特徴をもった牡蠣を育てているところです。

(広島和牛「元就」/全国農業協同組合連合会 広島県本部)

そして、知られざる広島県の県産品が和牛です。実は、広島県はかつて日本三大牛馬市の一つとして知られ、久井(くい)町(現三原市)に「杭の牛市」という市場がありました。そこから江戸時代の後期に和牛の国内生産が本格的に進められるわけですが、その現代和牛のルーツの一つが「広島血統」です。

広島和牛は、全国和牛能力共進会でも二連覇の実績をもつ和牛でしたが、県内の畜産の衰退とともに、次第に頭数が減少していきました。今日それを復活させようとして誕生したのが、由緒正しい広島血統を受け継いだ広島和牛「元就」です。「元就」は、共進会でも非常に高い評価を受けていますが、血統だけではなく、オレイン酸の含有比率が高い、非常に美味しい和牛とされています。

澁谷:サシが非常に綺麗に入っていて、本当に美味しそうですね。ちなみにですが、東京でも「元就」を食べられるところはあるのでしょうか。

湯﨑知事:「元就」は、ぜひ皆さんに召し上がっていただきたいところですが、頭数が少なく、なかなか食べることができないのもポイントです。ほとんどが広島県内で消費され、東京だと毎月29日の「ニクの日」に、広島県のアンテナショップ「TAU(タウ)」で販売されるだけの代物ですので、広島県にお越しの際にぜひご賞味ください。

◆ 自立可能な農業を目指して、新規就農者を全面的に支援

澁谷:「2020広島県農林水産業チャレンジプラン」など、農林水産業に対する県の取組みについてお聞かせください。

湯﨑知事:「2020広島県農林水産業チャレンジプラン」は平成23年度からスタートし、27年度から29年度にかけてはチャレンジプランアクションプログラムという形で、産業として自立可能な農業を目指して、農業従事者一人当たりの所得500万円を目標に取り組んでいます。

現在、広島県の農業従事者の平均年齢は全国で第3位と高く、一経営体当たりの平均耕地面積も他の都府県と比較して約6割しかないなど、農業は非常に厳しい状況にあります。しかし、農業を行う環境として気象条件には非常に恵まれています。例えば、瀬戸内周辺は温暖で、県北部の中国山地周辺は非常に寒くなることから県内の寒暖差が大きく、バラエティに溢れた食材の生産が可能です。また、良質な水があることも、美味しい農産物を生産できる条件だと思います。

環境として恵まれている部分を活かしながら、今後は専業農家の方々がしっかりと収益計上できるモデルを作っていくことが県としての課題だと認識しています。農業法人などの組織経営体は、直近10年間で518経営体から780経営体と約1.5倍に増加しています。県としては、このような専業農家や農業法人などの担い手に向けて、トマトやホウレン草、キャベツなどの重点品目を定め、それらの生産量が増えるように、農地集約や担い手育成の計画を策定し、技術は当然のこと収益計上できるモデルづくりに取り組んでいきます。

新規就農者の支援については、単に研修を行ったりするだけではなく、一人の農業従事者として将来的に独立できるのかを考えて支援します。例えば、新たに農業を始めようとすれば、初期投資としてかなりのコストがかかりますが、リースによってコスト負担を抑えるようにしたり、一定のリスクは県やJAがとることで新規就農者を支援します。また、「インキュベーション法人」という表現をしていますが、新規就農者が研修を受けてすぐに独立することは難しいと考えていますので、農業法人を立ち上げ、そこで技術面に加え、経営能力を含めて、充分な経験を積ませてから独立させる仕組みを構築しています。


澁谷:確かに、農産物の栽培技術だけではなく、経営能力を育成することも非常に重要ですね。

湯﨑知事:例えば、シェフを目指している方が、調理学校を卒業してすぐに自分の店をオープンさせることは滅多にないはずです。5年や10年の年月をかけて調理技術に加えて、仕入や会計、顧客への宣伝、内装設備に関することなど、あらゆることを学んでから独立していくと思います。農業の場合も考え方は同じだと思いますので、そのような道筋を県がつくり、サポートしていきたいと考えています。

◆ 付加価値の高い「しごと」を増やし、「ひと」を増やす

澁谷:地方創生への取組みについてお聞かせください。

湯﨑知事:県の政策として「ひろしま未来チャレンジビジョン」を掲げ、「人づくり(人)」「新たな経済成長(経済)」「安心な暮らしづくり(暮らし)」「豊かな地域づくり(地域)」という4つの政策分野を設けていますが、これはいわゆる「まち・ひと・しごと」の考え方と同じです。「まち」の部分が「暮らし」と「地域」の2つに分かれていますが、県としては早いタイミングから「まち・ひと・しごと」に着手してきました。特に「しごと」がなければ、「ひと」は定着しませんので、先ずは「しごと」とそのすべてを支える「ひと」の2つを起動力に政策を進めてきました。

新たな産業・基幹産業の育成・発展、アジア市場への積極的な参入を目指す取組みを「イノベーション立県」と表現していますが、そのようにして県内外で新しい付加価値を生んでいこうとする取組みを進めてきた結果、直近の統計では県内総生産や県民所得の伸び率で全国1位になっています。今後は、東京一極集中という問題にどのように対応していくかもありますが、県内人口が社会増に転じるなど、政策の成果がはっきりと出てきていると思います。

澁谷:経済の成長が、県内人口の社会増に繋がっているんですね。

湯﨑知事:「しごと」が増えることで、そこに仕事を求めて「ひと」が集まってきます。そして、県がこれから取り組んでいくべきことは、付加価値の高い仕事をつくっていくことです。足元の有効求人倍率は1.8倍まで上がり、県内にはたくさんの仕事がありますが、これからはいかにして付加価値の高い仕事をつくっていくかが重要だと考えています。また、外国人が非常に増えており、外国人を県内人口に加えると、広島県は近年、社会増が続いています。付加価値の高い仕事を増やし、さらなる人口増加に繋げていきたいと思います。

◆ 仕事も暮らしも欲張りなライフスタイルを目指す

澁谷:都道府県知事として初めて「イクボス宣言」をされ、実際に育児休暇も取得された湯﨑知事の「働き方」に関するお考えをお聞かせください。

湯﨑知事:「仕事も暮らしも欲張りなライフスタイル」と表現していますが、県としては仕事と暮らしのどちらかを諦めるのではなく、ともに自分の希望が叶うようなライフスタイルの実現を目指していこうと取り組んでいます。これが、新しい時代の日本人のライフスタイルではないでしょうか。戦後の高度成長期では、欧米に追いつき追い越せを目標に、あらゆるものを犠牲にして働き、所得を伸ばしてきたわけですが、今や日本はあらゆる面で最先端にいます。これからは自分たちでモデルをつくっていく必要があり、そのためにはクリエイティビティが求められます。従来のような働き方では新しいものは生まれてこない時代となってきています。

また、日本は人口減少という問題にも直面しています。これらを克服していくためには、女性や高齢者など多様な働き手が社会に参画する必要があります。皆が従来のように長時間働く方が評価されるのでは、社会が回らなくなります。「誰が介護をするのか」「誰が子育てをするのか」「誰が地域の課題に取り組むのか」といった問題にも発展します。全員が職場以外での時間を有意義に使えるような状態にならなければなりませんが、それは個人の視点から考えれば、しっかりと働くことができる一方で、しっかりと個人のための時間を持つことができる、或いは地域社会のために時間を使うこともできるということです。介護、子育て、地域活動、趣味などに有意義に時間を使うことは豊かな人生だと思いますし、それがクリエイティビティにも繋がり、良い循環になっていくと思います。仕事も暮らしも両立できるライフスタイルは、21世紀の日本人の新しいライフスタイルであり、それを広島県で実現していきたい。そのための働き方改革であり、ストレスが高いから時短勤務にしましょうという話ではなく、もっと積極的な意味で「欲張りに」仕事と暮らしの両立ができればと思います。

澁谷:本日は、貴重なお話をありがとうございました。