第23回 「おかべ」オーナーシェフ 岡部 仁 氏

岡部さんが料理の道に進もうと思ったきっかけは?

きっかけは、札幌中央卸市場に就職したことです。

元々ずっと野球をやっていて、料理人になろうとは思っていませんでした。
北海道に渡ったきっかけも、大学で野球をする為でしたね。
ですが、当時、野球部員がみんな慕っていたご夫妻の居酒屋で調理場の手伝いをしていました。
大学卒業後は、調理機器メーカーに入社しました。入社の理由も、社会人野球が強かったからです。
すすきのエリアの担当で飲食店にはよく出入りしていました。
今思えば、意識はしていませんでしたが、『食』に精通する職業についていましたね。
退職した後は、縁があり、札幌中央卸売市場に転職しました。
市場には食材がたくさんあり、また、市場の食材を料亭、ホテルに配達をする中で、
料理人の世界に興味を持って、飲食業界を目指そうと思いましたね。

飲食を始めたのは25~6歳で、周りよりも遅かったんです。
料理の専門学校を卒業した人や、実家が旅館や寿司屋の同期が周りにいる中で、
僕は元々サラリーマンですから、
そういった状況もあり、料理に対する情熱は人よりあったと思います。
やるからには自分のお店を持ちたいと思って邁進し、
周りから見たら、とても速いスピードで成長していっていたと思います。
それには、大学時代での中華料理屋での経験や調理機器メーカー等、
これまでの経験がとても生かされました。

北海道の飲食店で、31歳ぐらいまで働いていましたが、29歳には本店の店長を任されました。
TVチャンピオンの北海道代表で出演したのもこの頃ですね。

お店「おかべ」について教えてください。

好きな時間にお帰り頂いて、ゆっくり自由に楽しんでもらいたい、
それを実現できたのが「おかべ」です。

「おかべ」では、お客様に時間を気にせず楽しんでもらいたい、という点が基本的な考えとしてあります。
1日のうちランチ1組、ディナー1組のみの予約制ですので、
『ご来店いただいた1組のお客様の為だけに、お料理をお出しする』という気持ちでお迎えてしております。
お祝いやご両家の顔合わせ、還暦祝いなどに多く利用していただいており、
その人の人生にとって特別な意味を持つ日に使ってもらえることはとても嬉しいです。

元々は、北海道で起業しようと思って準備を進めていたのですが、
母が倒れたことをきっかけに北海道での起業をとりやめ、神奈川に戻りました。
その時にちょうど、昔から親交があった現在の「炉端焼うだつ」の社長が、
お店を始めるタイミングだったこともあり、お店の名前も建物もない時から一緒に立ち上げました。
うだつでは去年の5月まで、12年間働きました。

人気店にするために従業員教育や様々な仕組みをつくっていきましたが、
いざ人気店になると、お客様の回転率を考えなければいけなくなり、
自分の思いややりたいこととズレてくる。
本意ではなくなってしまうな、と感じていました。
人を動かすことや、スケジュールを組むこと、うまく回る仕組みをつくるのは得意ではありましたが、
次の予約の為に時間で区切りお客様を帰らせたり、時間を気にして業務を行うことに疑問を持ち始めました。
自分でつくりあげたのにも関わらず、飲食店ってこれでいいのか?という疑問を持ち始めたのが独立のきっかけですね。

食材選びと食に対する思いについて教えてください。

本当に喜んでくれるものを、おいしく調理していきたいです。

やはり、こだわりがある食材を使いたいという思いがあります。
「おかべ」では、コース料理を提供するので、
どの料理にもストーリー性のある、こだわりがある食材を使いたいと思っています。
多少値段が高くても、良いもの・価値があるものを。
お子様や年配の方もご来店されるので、
皆さんに対して安全、安心なものとして、産地や生産者の方が分かる食材を選んでいます。
また、こだわりの圃場や環境がある食材の説明は、料理の良いスパイスになり、お客様に喜んでもらえます。
安価な食材を使おうと思ったらいくらでもできますが、
儲けることを目的にしていきたくないですね。
産地視察で生産者の方から直接聞いたお話は、
召し上がっていただくお客様にもお伝えし、楽しい時間を過ごしてもらえていますよ!

メニューを作るうえで大切にしていることは?

お客様との会話が原点です。

毎朝、お客様にお出しする料理を考えることから1日が始まります。
当店は、決まったメニューが無い為、メニュー表はお出ししないんです。
ご予約いただくタイミングで、お電話口でアレルギー有無と、
どんな料理が好きか、または苦手な食べ物があるか等、
希望があればリクエスト料理を伺い、お客様がその日食べたい料理を提供しています。
当日、お客様との会話でメニューを変更することもあります。
その時の気分や体調、食べるスピードを見て、量の調節や料理に工夫をし、
お客様に満足してお帰りいただけるように、その場その場で臨機応変に対応しています。
お品書きがないからワクワクする、と言って下さるお客様も多く、好評いただいています。

産地視察ツアーに参加する目的、参加した感想を教えてください。

産地視察は知らなかったことが知れる良い機会。
各地で新しい発見があるのでとても楽しいです。

 

これまでの産地視察で最も印象に残っている食材は、
岩手県の短角牛(有限会社 総合農舎山形村)で、放場がとてもきれいでした。
広大な牧場内でストレスのない環境で育てられている短角牛を視察し、
牛のすぐ近くまで行けたことはとても印象に残っています。
あとは、熊本県オメガ3卵(株式会社緒方エッグファーム)です。
鳥の健康状態がとても考えられていて、1年間で病死した鳥は1羽しかいないというお話は本当にすごいなと思いました。

元々、食材や産地を見に行くことは好きで、昔から商談会等は参加していました。
ただ、昔は北海道という枠にとらわれていたので、
もっと他の県にも目を向けようと思って各地の産地視察に参加させていただいています。
視察中は、生産者の方のこだわりを聞いたり、気になることをお聞きしたり、
生産者の方とコミュニケーションをとれるのはもちろんのこと、同業の方との出会いがあるのも嬉しいです。

同業の方と話せる機会は普段あまり無いので、なるべく全員に声をかけるようにしています。
良いコミュニケーションの場になっていますよ。

 

最後に今後の展望を教えてください。

食育事業や料理教室、人との関わりを大切にしていきたいですね。
多くの人に「食べること」を色々な観点から見てほしいです。

 

「おかべ」はまだスタート地点にいます。
今後、もっと広く世間に認知された段階で、やりたいこと、アイディアはたくさんあります。
その一つとして、多くの方に「食べること」への喜びを与えたいと思っています。

【食育】にも目を向け活動していきたいですね。
現在、畑に種をまいて育て、収穫するということを自分の子供も巻き込んでやっています。
今後、料理教室の生徒さんも畑に連れていき、
食材の収穫から調理まで一貫して行い、食の楽しさを伝えていければなと思います。

将来的には、おかべブランドを作って、製品も作っていきたいと考えています。
今後様々な食材や、たくさんの人に出会って、たくさんの人に愛される製品を作りたいですね。
そのためには、まず「おかべ」を広める。
人に喜んでもらって、自分も楽しめればベストですね。
いろいろな方面からアプローチしていきたいなと思っています。


おかべ

住所:神奈川県横浜市西区浅間町2-100-15
TEL:090-8898-6095 (完全予約制)

 

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